「古いフローリングを剥がすのは大変そう。その上から桧を張れないか?」——実はこの「重ね張り(上張り)」こそ、DIYで一番挑戦しやすいフローリング工事です。解体がなく、ゴミも出ず、下地として既存床をそのまま使えるからです。
ただし重ね張りには、剥がして張る工事にはない固有の落とし穴があります。代表が「施工後にドアが開かなくなった」という建具トラブル。この記事では、重ね張りDIYの手順と、床が15mm上がることへの対処法を順番に解説します。
・既存床が沈む・大きくたわむ・腐食臭がする(下地の劣化は上張りでは直りません)
・マンションの場合(管理規約の遮音規定と申請が必要。マンションLL45の記事参照)
・床暖房が入っている床(対応品の選定と温度条件の確認が必要)
重ね張りのメリットと、避けられない代償
重ね張りのメリットは明快です。
- 解体不要:既存床の撤去・処分費がかからず、工期も短い
- 下地いらず:既存フローリングがそのまま捨て貼り(下地合板)の役割を果たす
- 静かで強い床に:床の総厚が増えるぶん、踏み心地がしっかりする
一方で避けられない代償が「床が張った板の厚みぶん高くなる」こと。当店の桧フローリングなら12mmまたは15mm、床全体がそのまま持ち上がります。このたった十数mmが、ドア・敷居・収納扉のあちこちに影響します。ここを事前に潰せるかどうかが、重ね張りDIYの成否を分けます。
最頻トラブル「ドアが開かない」を防ぐ事前チェック
床が上がったことで開き戸の下端が新しい床に擦り、開け閉めできなくなる——重ね張りで最も多いトラブルです。複数の施工解説でも「開き戸が干渉して開閉できなくなることが多々ある」「施工前に建具まわりのクリアランスを必ず確認」と繰り返し注意されています。施工前に、次の順でチェックしてください。
CHECK 1|部屋にあるすべての建具を書き出す
開き戸・引き戸・クローゼットの折れ戸・収納の開き扉・出入口の敷居。床に接する可能性のあるものをすべてリストアップします。意外と見落とすのが「内開きのドアの軌道上にある床」です。
CHECK 2|ドア下端と床の隙間を実測する
ドアを閉めた状態で、下端と現状床との隙間をスケールで測ります。この隙間が「張る床材の厚み+数mmの余裕」より小さければ、そのままでは確実に干渉します。例えば15mm厚を張るなら、隙間は18〜20mm程度欲しいところです。
CHECK 3|干渉する場合の選択肢を決めておく
①ドア下端をカットする(丸ノコ+治具が必要。建具カットは難易度高め)、②薄い12mm厚の床材を選ぶ、③その部屋の手前で見切り材を入れて張る範囲を区切る、④建具屋さんにドアカットだけ依頼する——のいずれかを施工前に決めておきます。「張ってから考える」が一番の失敗パターンです。
なお当店では、まさにこの床高問題のために重ね張り向きの12mm厚桧フローリングもご用意しています。3mmの差でもドア下の余裕は大きく変わります。
施工前の下処理3点セット(巾木・ワックス・きしみ)
① 巾木は先に外す
壁の下端に付いている巾木は、張り始める前に外しておくのがおすすめです。巾木を残したまま張ると、壁際の伸縮スペース(5〜10mm)の上端が中途半端に見えてしまい、納まりが汚くなります。外した巾木は再利用するか、新しい床の高さに合わせて付け巾木を新調します。バールを使う際は壁紙を傷めないよう当て板を忘れずに。
② 既存床のワックスを除去する
既存フローリングの表面にワックスが残っていると、接着剤が食い付かず接着不良の原因になるとされています。住居用洗剤やワックス剥離剤で落とし、よく乾燥させてから施工します。テカテカに光っている床ほど要注意です。
③ きしみは「張る前に」ビスの増し打ちで直す
ここが重要です。既存床のきしみ・たわみは、上に新しい板を重ねても直りません。きしみの原因は既存床と下地の間の緩みにあるからです。施工前に床全体を歩き回り、鳴る箇所には根太めがけてビスを増し打ちして固定します。それでも直らない大きなたわみや沈みは下地の劣化が疑われるため、上張りを中止してプロに点検を依頼してください。
張り方の基本。ボンドは油性ウレタン系一択
重ね張りでは既存床が下地になるため、固定は「ウレタン系ボンド+フロア釘またはフローリングビス」の併用が基本です。接着剤は必ず床用の1液型ウレタン樹脂系(いわゆる根太ボンド)を使ってください。家庭用の水性木工用ボンドは水分で無垢材を反らせ、床鳴りの原因になるため施工マニュアルでも使用不可とされています。
- 開梱した板は施工する部屋に2〜3日以上置いて湿度に馴染ませる
- 壁際クリアランス5〜10mm、板間0.3mm前後を確保
- ボンドは下地(既存床)側に塗り、サネには付けない
- 雄ザネに斜め45度で釘・ビスを打つ
固定方法の詳細(釘・ビス・ネイラの比較や長さの目安)は釘・ビス・ボンドの使い分け記事に、やってはいけない失敗の一覧はDIYのNG10選にまとめています。
敷居・隣室との段差15mmはこう納める
部屋の中だけ床が上がるので、出入口では必ず段差が生まれます。放置するとつまずきの原因になるため、見切り材で処理します。
| 取り合いの状況 | 納め方 |
|---|---|
| 敷居が新しい床より低くなる | 敷居の上にへの字金物や薄い見切り材をかぶせ、緩やかな段差に変える |
| 隣室(廊下など)と15mmの段差ができる | 斜めにカットされた「段差見切り材(床見切り)」を境目に固定し、スロープ状に納める |
| 引き戸の敷居・レールに干渉する | レール手前で張りやめ、見切り材で納める。レールの嵩上げは建具調整が絡むためプロ相談が無難 |
見切り材はホームセンターや床材販売店で各種厚みが手に入ります。「新しい床の厚み=段差の高さ」に合うものを選んでください。
まとめ:重ね張りは「測ってから買う」が9割
重ね張りDIY自体の作業難易度は、フローリング工事の中では低い部類です。失敗のほとんどは作業中ではなく、施工前の確認不足——ドア下の実測を怠った、きしみを放置した、ワックスを落とさなかった——で起きます。逆に言えば、スケール1本でドア下と敷居を測って回るだけで、重大トラブルの大半は事前に回避できます。
「この部屋に12mmと15mmどちらが向くか」「何束必要か」といった購入前のご相談は、お電話やお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
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「ドア下が17mmしかない」といった具体的なご相談もお電話(0538-58-2395)で承ります。