「マンションでも桧の無垢床にしたい」というご相談は少なくありません。先に正直にお答えすると、可能です。ただし戸建てより条件が厳しく、確認すべきことが多いのがマンションです。
最大のハードルは、管理規約に定められた床の遮音規定。桧の無垢フローリングを一枚張っただけでは遮音性能はほとんど期待できないため、何らかの組み合わせでクリアする必要があります。この記事ではその具体的な3つの方法と、必ず踏むべき手続きを解説します。
・床の張り替えは専有部分の工事でも管理組合への申請・承認が必要です(無断施工は原状回復を求められることがあります)
・規約の遮音規定の解釈や必要書類は管理組合ごとに異なります
・遮音構成の設計・施工は難易度が高く、DIYよりリフォーム会社等のプロへの依頼を強くおすすめします
材料のことは当店へ、規約のことは管理組合・管理会社へ。この順番だけは守ってください。
まず管理規約。「LL45」「ΔLL(I)-4」とは何か
多くの分譲マンションの管理規約には「床仕上げ材は遮音等級LL45以上とすること」といった規定があります。LL値は軽量床衝撃音(スプーンを落とす、スリッパでパタパタ歩くといった音)の伝わりにくさを表し、数字が小さいほど遮音性能が高い指標です。LL45は「上階の物音がわずかに聞こえるレベル」とされています。
ややこしいのが表記の新旧です。2008年のJIS改正以降は、床材単体の遮音性能を表す「ΔLL(I)等級」(デルタ等級)が使われており、ΔLL(I)-4がおおむね旧LL45相当とされています。古い規約はLL45表記、新しい床材カタログはΔLL(I)表記、という食い違いがよくあるため、自分のマンションの規約がどちらの表記で何を要求しているかを最初に確認してください。
そして重要な事実として——無垢フローリングそのものは、この遮音等級を持っていません。桧15mm単体を直貼りしても規定はクリアできません。だからこそ、次の3つの方法のいずれかを取ることになります。
方法1:遮音マット+無垢フローリングの重ね構成
コンクリートスラブに直貼りされたマンションで使われる方法です。遮音性能を持つ専用マットを敷き、その上に(必要に応じて捨て貼り合板を挟み)無垢フローリングを施工します。
① 桧フローリング 15mm
② (構成により)捨て貼り合板
③ マンション用遮音マット(専門店の例:厚み22mm)
④ コンクリートスラブ
無垢フローリング専門店では、遮音マット22mm+無垢15mmで計37mm程度になる対応例が紹介されています。合板を挟む構成ではさらに厚くなり、床の仕上がりは40mm前後上がると考えておくべきです。
ここで正直にデメリットをお伝えします。
- 床高の問題:40mm前後の床上昇は、ドア・クローゼット扉・敷居・玄関框・備え付け家具のほぼすべてに影響します。建具の調整・カットが前提の工事です(重ね張り記事で解説したドア干渉問題の、さらに大きい版が起きます)
- 踏み心地:遮音マットはクッション性があるため、戸建ての無垢床のような硬く締まった踏み心地とは少し変わります
- 採用可否:この構成で規約の要求を満たすと認められるかは、最終的に管理組合の判断です。マットの遮音試験データを添えて事前に確認が必要です
方法2:二重床(置き床)の上に張る
防振ゴム付きの支持脚で床パネルを浮かせる「乾式二重床」の上に、捨て貼り合板+無垢フローリングを施工する方法です。すでに二重床のマンションならその構造を活かせますし、直貼りマンションでも二重床への変更工事という選択肢があります。
- 長所:遮音性とともに配管スペース・床下断熱も得られる。無垢らしいしっかりした踏み心地を作りやすい
- 短所:工事規模と費用が大きい。天井高が下がる。そもそも二重床への変更自体を規約で認めていないマンションもあります
既存が二重床の場合に仕上げ材へどの等級を求めるかは、規約の書きぶりによって扱いが分かれるところです。自己判断せず、管理組合に「この構成で申請が通るか」を確認してください。
方法3:遮音等級付きの床材を選ぶ(無垢にこだわらない選択も含めて)
ΔLL(I)-4等級を取得した遮音直貼り用の床材(多くは表面に無垢挽板を使った複合フローリングや、裏面に遮音材を一体化した製品)に切り替える方法です。桧の無垢一枚物とは別物になりますが、床高の上昇が小さく、申請も通りやすいのが現実的な利点です。
当店は桧の無垢フローリングの工場直販店ですが、それでも「マンションの条件によっては、無理に無垢を通すより遮音等級付き製品が合理的なケースがある」ことはお伝えしておきます。リビングは遮音等級付き、規約上の制約が緩い部屋だけ無垢、といった使い分けの相談も、リフォーム会社とぜひ検討してみてください。
管理組合への申請は必須。標準的な流れ
どの方法を選ぶ場合も、工事前の申請・承認は必須です。マンション管理の解説では、おおむね次の流れが標準とされています。
申請の標準フロー
① 管理規約・使用細則で床工事の条件(要求等級・工事可能時間・届出書式)を確認 → ② リフォーム会社と工法・床材を決め、遮音性能の根拠資料(試験成績書など)を揃える → ③ 工事申請書を管理組合へ提出 → ④ 理事会の承認(規約によっては上下左右の住戸の承諾書が必要な例もあります)→ ⑤ 承認後に着工。
「申請が通ってから床材を発注する」が鉄則です。先に材料を買ってしまい、申請が通らず使えなくなるのが最悪のパターンです。マンションにお住まいの方は、ご注文の前に管理組合の承認状況をぜひ一度ご確認ください。
まとめ:マンション×無垢は「設計力」で決まる
| 方法 | 無垢らしさ | 床高への影響 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ① 遮音マット+無垢 | ◎ 本物の無垢15mm | 大(40mm前後上がる) | 建具総調整・踏み心地の変化・組合の承認 |
| ② 二重床の上に施工 | ◎ 踏み心地も良好 | 構造による | 工事規模大・二重床不可の規約もある |
| ③ 遮音等級付き床材 | ○ 挽板等で木の質感 | 小 | 桧無垢一枚物ではなくなる |
マンションで木の床を実現する道は必ずあります。ただしそれは「規約を確認し、管理組合の承認を取り、建具と床高を設計に織り込む」という段取りの上に成り立つもの。材料選びの前に、まず管理規約とリフォーム会社への相談から始めてください。その上で「この構成なら桧の無垢が使える」となったら、材料のことは私たちが全力でお手伝いします。
🏢 マンション計画中の方も、まずは質感の確認から
申請の検討段階でも、桧の質感を知っておくと工法選びの判断が変わります。無料サンプルをご活用ください。
「規約にこう書いてあるが使えるか」といったご相談はお電話(0538-58-2395)でどうぞ。